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CASE STUDY / キチナングループ株式会社

「現場は止められない」から始める設備投資。
キチナングループが挑む、買い手主導の自動化検討

物流センター自動化の検討伴走(仕分け設備・ピッキングAMR)/ 月次伴走・継続中

COMPANY PROFILE

社名キチナングループ株式会社
代表者代表取締役社長 井本 健
創業1962年
資本金30,000千円
従業員数1,000名(グループ合計)
本社/拠点山口県宇部市/山口・岡山・大阪・名古屋
事業内容一般貨物自動車運送、倉庫・流通加工、3PL ほか

出典: キチナングループ公式サイト(2026年8月時点)

抱えていた課題

  1. 複数社から届いた自動化提案は前提が揃っておらず、横に並べても比べられない。効果試算が自社で成立するかを確かめる手立ても社内になかった。
  2. 後戻りのきかない設備投資でありながら、判断の基準がベンダーの見積のほうにあり、自社にはなかった。

つづらの伴走による変化

  1. 投資が成立する条件を自社の実績データから逆算。設備価格より先に固めるべき条件が特定され、判断の物差しが自社へ移った。
  2. 提案書に記載のない前提を洗い出し、ベンダーが回答できる確認事項へ変換。導入後に表面化するはずだった論点が、契約前に揃った。
キチナングループの倉庫内でのフォークリフト作業風景
キチナングループの物流現場(写真: キチナングループ公式サイトより)

提案書は読める。当てはまるかは分からない

キチナングループ様の主力物流センターでは、二つの検討が同時に動いていました。仕分け設備(ソーター)への投資と、ピッキング工程へのAMR(自律走行搬送ロボット)の導入。いずれも金額が大きく、いったん据え付ければ後戻りのきかない設備投資です。

比較の物差しがない、という難しさがまずありました。ベンダー各社の提案書は前提の置き方がそれぞれに異なり、横に並べただけでは優劣を判断できません。効果試算が自社の現場にそのまま当てはまるのかどうか、確かめる手立ても社内にはない。

そして、検討のあいだも現場は止まりません。その先には取引先がいて、今日の出荷は待ってくれない。日々の仕事をこなしながら、その判断をすることになります。

設備投資でよくあるのは、この状態のまま提案書と商談だけが先に動いてしまうことです。キチナングループ様は、そうなる前に手を止めました。提案を検証する目を、社外から入れる。相談は、その判断から始まりました。

見積書ではなく、自社の数字から開いた

相談先として声がかかったのが、合同会社つづらでした。ベンダーの説明は自社製品を前提に組み立てられ、検討の進め方を支援するコンサルティング会社は物流設備の中身まで踏み込めない。そして現場を回した経験のある人間は、たいてい売る側か、動かす側にいます。買い手の相談相手として座っていることは、ほとんどありません。

つづら代表の小池は、運送会社の経営、3PLセンターの運営、物流コンサルティング、そして物流ロボットベンダーの日本事業責任者。現場を回した側と、設備を作って売る側の、両方にいた人間です。あわせて、ベンダー各社から紹介料・手数料の類を一切受け取っていません。報酬を受け取るのは買い手側からだけです。

仕分け設備の検討で、小池が最初に開いたのは、キチナングループ様自身の実績データでした。どの条件が揃えば、この投資は回収できるのか。その成立条件を感度分析の形で洗い出し、結果を左右する順に変数を並べていきます。

見えてきたのは、設備そのものの価格より先に、拠点や人員にかかわる条件を固めるべきだという事実でした。設備をいくらで買うかは、最初に決める問いではなかったのです。

現場で引っかかったことが、確認事項になるまで

AMRの検討に入る前に、小池が求めたことがあります。現場を見せてもらうこと。それも、作業をしている時間帯に。人が動いていない倉庫を見ても、分かることは多くありません。

現場に入って、目に留まったことがありました。補充が、フォークリフトで行われている。ピッキングの人が大勢立っているフロアを、フォークリフトが行き来しています。

ここにAMRが入ってきたとき、この補充はどうなるのか。搬送を担うロボットと、補充のフォークリフトが、同じ通路を使うことになります。それを確かめないまま台数だけを数えても、意味がありません。

小池はその場で結論を出していません。現場の責任者からは、次々に質問が出ます。答えられることはその場で返し、設備の是非は持ち帰る。初めて訪れた人間が結論だけ置いていっても、話は前に進まないからです。

持ち帰ったこの論点を、翌月の定例に出しました。設備の性能ではなく、日々の運用をどう組み替えるかという話です。井本社長はすぐに受け取ります。

「基本的にはロボットを止めて、逃がして、補充する。その時間をどこかで取る、という話になると思う。あとは、ロボットの台数が相当いるよね、という話だよね」

このやりとりが、ベンダーへの確認事項のひとつになりました。提案書を何度読み返しても、この論点は出てきません。現場を見て、その場で答えを出さずに持ち帰ったからこそ、質問の形になりました。

「ぼーっと待つ人が増えるのでは」——人とロボット、どちらが待つのか

そして提案が届きます。小池はまず、示された数値をすべて再計算しました。大枠の考え方は理解できる。ただ、前提の置き方に揃っていないところがいくつかあり、そのうえで、提案の中に書かれていないことがありました。

人とロボットが、現場でどう出会うのかです。

ロボットが棚の前で人を待つのか、待たずに次の場所へ行くのか。待つなら、人が来るまでロボットは止まっています。待たないなら、今度は人が次のロボットを待つ。どちらの設計を採るかで、必要な台数は変わります。

そして導入後の計画には、待ちの時間が置かれていませんでした。歩く時間が減る効果は計算されている。人とロボットが互いを待つ時間は、ゼロのままです。設計がどちらなのかも、提案書からは読み取れません。

この点が伝わる前に、井本社長は自らベンダーに当たっていました。台数を増やせば待ちは減る。順序としては、当然の確認です。

「ロボットをもっと増やせないのか、と聞きました」

返ってきたのは、いまの通路と面積では台数を増やしにくい、という答えでした。ここで、現場で見た光景と、提案書に書かれていなかったことがつながります。人が大勢立っているフロアに、通路と面積で決まる台数のロボットを入れれば、どちらかが必ず相手を待つ。

「結局やっぱり待つ人が、ぼーっとただ待つ人が、すごく増えるんじゃないかということだよね」

生産性は、そこで落ちます。歩く時間が減っても、待つ時間が増えれば、差し引きは目減りします。どこまで残るのかは、待ちを計上してみないと分かりません。結果を決める条件が、提案書の外側に置かれていたということです。

「課題を書いて確認リストにしてもらえれば、私から相手に投げます」

検証結果と確認事項が戻ったのは、提案を受け取った翌日でした。結論を先に決めず、相手が答えられる形にしてある。

ベンダーへの確認事項から(表現を一般化しています)

・ロボットは人の到着を待つ設計ですか。待たない設計の場合、人が次のロボットを待つ時間は、どこに計上されていますか
・提示された処理能力は、1回の搬送でどれだけ運べる前提で計算されていますか。その前提は、当社の荷姿で成立しますか
・いまフォークリフトで行っている補充は、ロボット稼働中にどのように行いますか。その停止時間は、必要台数の計算に含まれていますか

検証の目的は、提案のあら探しではありません。導入したあとに、計画どおりの効果を出すことです。

決め急がない、という選択

導入するかどうかは、これから決まります。ただ、その判断を下すための材料は、もう手元にあります。決め方が変わった、ということです。

  • 投資の上限を、自社の数字で言えるようになった。拠点や人員の条件を先に固めたうえで、回収が成り立つ水準を実績データから計算してあります。価格交渉でも社内の意思決定でも、同じ計算をそのまま使えます。
  • 前提を入れ替えて、何度でも計算し直せる。試算は使い切りの資料ではなく、数字を差し替えれば再計算できる形で残っています。拠点や人員の前提が動いても、そのつど確かめ直せます。
  • 現場で気づいたことが、そのままベンダーへの確認事項になっている。導入後では直しにくい論点が、契約の前に手元にある。ベンダーとの商談は、質問と回答で進みます。
  • 決め急がずにいられる。現場を止められないことと、決断を急ぐことは別だからです。急ぐ理由が自社になければ、確認が返ってくるのを待てばいい。その余裕は、判断の基準が自社にあるから生まれます。

一度据え付ければ、簡単には入れ替えられない設備です。確かめてから決めることは、遅いことではありません。遅いのは、決めたあとで前提が違っていたと気づくことのほうです。

キチナングループ株式会社 代表取締役社長 井本健氏
代表取締役社長 井本 健様(写真: キチナングループ公式サイトより)

「現場の先にはお客様がいて、現場は止められない。今日やらないといけないことをこなしながらプロジェクトを進める、という前提があります。それを分かっている人と、知らずに理論や理想だけを語る人とでは、ものすごく違う。現場主義を掲げる方は多いのですが、見学して終わってしまうことも少なくない。現場の人と話して、それを抽象化してロジックに落とす。そこまでできる相手は、なかなかいません。」

キチナングループ株式会社 代表取締役社長 井本 健様

検討はいまも続いています。自動化は設備単体の話では終わらず、拠点のあり方や要員計画と地続きの経営判断です。月次の定例は、その時々の論点に合わせて続いています。

つづらの所見

ベンダーの提案書は、ベンダーの前提で書かれています。それ自体は当然のことで、責められる話ではありません。問題は、買い手にその前提を検証する手段がないまま、金額の話だけが先へ進んでいくことです。

フォークリフトが行き来している、という光景そのものは誰にでも見えます。それが「ロボットを止める時間はどこに計上されているのか」という問いに変わって初めて、投資の可否に効いてきます。見たことを持ち帰って、判断を左右する条件として言い直せるかどうか。そこが分かれ目です。

返し方も同じだと思っています。断定して返せば、議論はそこで止まります。質問で返せば、商談は前へ進む。買い手の側に立つというのは、ベンダーを疑うことではなく、答えが返ってくる形に問いを整えることです。

紹介料を受け取らない立場にしているのも、そこにつながっています。検証の結論が買い手の側を向いているための条件だと考えています。

ABOUT THIS ARTICLE

本記事は、キチナングループ株式会社様の許諾を得て、社名・お名前を掲載しています(2026年8月)。財務数値・投資金額・検討中のベンダー名は、許諾の有無にかかわらず掲載していません。支援の中で知り得た数値、および各社のご提案の内容も同様です。

同じ状況にいらっしゃる方へ

お手元の提案書に、人がロボットを待つ時間は計上されていますか。歩く時間が減る効果だけが、引かれていませんか。

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